チェロの入手 生チェロ編

恵まれているのだろうが、ナランのチェロは「チェロやってみたい、チェロ弾きたい」と騒いでいたら、奇特な方が「使ってないチェロがあるのでどうぞ」と、無期限無料で貸して下さったものである。どうやら、ナランの身長、手の大きさからフルサイズのチェロは持て余してすぐに諦めてしまうに違いない、と踏んだらしい。

ところが、諦めることも飽きることもなく会うたびに「こんな事ができるようになった、これができなくて苦労している」とチェロの話ばかりするのであきれたらしい。「私のところで置いておくよりも、弾く人がいる方が楽器も幸せです。貰って下さい」と譲って貰う事になってしまった。

驚いたやら嬉しいやら。

と、いうのもそろそろちゃんとお返しして自分のチェロ買わなくちゃいけないよな、と思い始めていたころだったから。ところが、半年ほどの間にすっかりお借りしている楽器に惚れてしまっていた。いまさら、別の楽器は欲しくない。

自分の弾いている楽器がどんな楽器なのか気になのが人情。何やら下世話ではあるが、お借りしてすぐにラベルを見てチェックしていた。それほど高価な楽器ではない。ネットで20万円ほどで販売されている。

楽器屋さんで弓を選ぶときに売り物のチェロを試奏させて貰った事がある。見た目は優雅で、音色はキラキラと美しくお値段はなかなかではあるが、アマチュア愛好家が奮発すれば手が出ない程ではないものだったが、欲しいとは思わなかった。むしろ、お返しする時がきたらまったく同じ楽器をネットで買おうかと思っていたくらいだった。

そんなに惚れているヤツが自分のモノになるなんて…。何と運が良いのだろう。ご縁に感謝した。

失礼になるかもしれない、とは思いつつお礼を包んでお渡ししようとしたが、受取って頂けなかった。

「私の楽器もある方から頂きました。それなりの楽器でしたが、眠っているよりはと譲って頂きました。貧乏な学生でしたからどれだけ嬉しかったか。おかげで練習できました。そして今の私があります。私にとってのその方へのお礼です。失礼ながら正直申しまして、あなたほどの年齢の方で音楽的なバックグラウンドも無いのに、そんなにも喜んで下さるなら、楽器は本望です。置いておくものではないんです。弾いてナンボです。楽器に代わってお礼を言わせて下さい。もしそれでも気持ちが収まらないのなら、いつかどこかで誰かに私の気持ち、私に楽器を譲ってくださった方の気持ちを伝えてください。」

愛だ。楽器を愛し、音楽を愛しているからでてくる言葉だ。
涙が出そうになった。

こうやってチェロを初めて半年、何の苦労もせずマイ楽器が手に入った。

つや消しの赤銅色の無骨者である。命名「銅丸」

「銅丸」はもともとジュニアのチェリストの練習用楽器だったらしい。音大に進学し、不要になったとかで某氏のところにやってきたようだ。最初から弾きやすかった。レッスンの先生曰く、よく鳴る楽器ですね。ジュニア君に鍛えられたお陰のようだ。

元の持ち主君ほど上手に弾くことはできないだろうけど、元の持ち主君に負けないくらい大事にするよ。

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